夢楽洞について

越前の「夢楽洞」の歴史

かつて福井城下に、「夢楽洞」と呼ばれる町絵師の工房がありました。江戸時代の半ばから明治・大正期にかけて、「夢楽洞万司(むらくどうまんし)」の雅号を受けつぐ歴代の絵師が営んだ工房です。この「夢楽洞」の人気商品の一つが絵馬で、江戸時代の半ばから幕末・明治初期にかけて大流行しました。越前を中心に、加賀や能登、越中地方に今もたくさん残っています。旅のみやげや祭りの記念品に人びとが買い求め、町や村の堂・社に奉納したのです。江戸の浮世絵に負けない、すばらしい工芸品でした。もう一つの人気商品は、「万司天神」と呼ばれた天神画(掛軸)です。上半身だけを描くことに特徴があり、写楽や歌麿などの役者絵に似ています。天神が小指を立てていることも、奇妙な特徴です。役者絵に見立てたトレンディーな天神画として、正月の天神講の掛軸に愛用されました。幕末から明治期にかけて、越前で流行しました。